アデーレ


 アデーレ・ハルムス(Adele Harms 1890-1968)
 最初,エゴンはハルムス家の美しい姉妹のどちらかと結婚したいと思っていたが,姉アデーレが「私,尼さんなの」と言ったため,エディットとの結婚を決めた。 それにもかかわらず,二人の結婚後もアデーレはエゴンのモデルをつとめ,下着姿の写真まで撮らせている。エゴンはエディットの清純さに惹かれながらも,アデーレの 妖艶さを捨てがたかったようだ。
 美術史家アレッサンドラ・コミーニが初めて取材で訪れたとき,アデーレは76才で薄暗く寂しいアパート(Daungasse 3)で管理人をしていた。 若い頃は洋品店を経営していたアデーレも,少々痴呆症状がみられた。可愛らしく聡明な妹に生涯コンプレックスを持ち続けていたらしく, 「母は私より妹を愛していた。」と泣き叫んだ。エゴンとの結婚も妹にゆずりヌードモデルまでつとめ,エゴンの死後ずっと独身を通していた。コミーニも76才のアデーレに 哀しみを感じたようだ。
 その後まもなく,アデーレは療養所(Steinhof sanatorium)に引き取られた。そこでは,エゴンシーレの義姉として少々人気者になったようだ。
 78才で死去。
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